若い人も芸者遊びってしていいの?浅草芸者さんに気になるあれこれを直接聞いてきた

昨年に東武浅草駅ビルの大型ビジョンで放映された「COREZO! ASAKUSA」のイメージCM。今回は映像の中に出演いただいた、浅草芸者の香名恵(かなえ)さんと千華(ちはな)さんを迎えインタビュー。CM撮影を終え、芸者の世界に飛び込んだきっかけ、浅草花柳界にかける想いなどをうかがいました。

幼いころに抱いた夢が芸者という職を通して叶った

――お2人が芸者さんになったきっかけは何だったのでしょう?

千華さん「以前から京都の舞妓さんの着物姿に憧れていたんです。それと同時に、三味線などの和楽器にも興味もありました。一度は違う道に進もうとも思いましたが、学生のとき校外学習で歌舞伎を見に行ったときに憧れていた気持ちが蘇って。その後、東京に芸者さんがいることを知って、置屋さんのお世話になりお稽古へ通い始めました」

香名恵さん「私は『踊りを職業にしたい』と言う気持ちが強かったんです。それは、幼少期に見たバレエや日本舞踊がきっかけだったと思います。舞台を見て『自分でも踊ってみたい』と言う気持ちが芽生えたんです。お稽古は楽しくて夢中でしたね。だからか、指導が厳しいと思ったことは一度もありません」

日々の稽古や白塗りの化粧。知られざる芸者の努力

――お稽古ではどんなことを学ぶのですか?

香名恵さん「それぞれのお師匠さんのもとで、踊りや、楽器の演奏を学びます。踊りにしても演奏にしても、大切なのは気持ちのいれ方。日本舞踊は歯を見せずに感情を表現しなくてはいけません。振り付けひとつひとつに込められた意味を理解して、感情移入していくんです。また、三味線や太鼓などの和楽器の演奏でも感情の起伏をどのように入れていくかを練習します」

――芸者さんの芸から滲み出る艶やかさは、そんな日々の鍛錬があってこそなのですね。お座敷で踊る演目は、季節によって異なるのでしょうか?

香名恵さん「年間を通して踊るものもありますが、毎月変わるものや、季節によって変える演目もあります。また、お客さまのリクエストに応じて歌や踊りを披露することもありますね」

――お稽古をしているときと実際にお客さんを前にしたお座敷では、やはり気持ちの面で変化は生まれますか?

香名恵さん「お客さまの前では緊張感が伴うので、お稽古のときとは心持ちが全然違いますね。『舞台には魔物がいる』と言う風に、お座敷でも思わぬアクシデントが起こることがあります。それもあってか、私たちが踊る時に演奏者(地方さん)が座る赤い毛氈(もうせん)には魔除けの意味が込められているんです」

――芸の道を極めることの難しさを痛感させられます…。そのほかに何か大変なことはありますか?

千華さん「白塗りのお化粧が大変ですね。お化粧するときは、白粉がはじいてしまうので化粧水や乳液は一切塗ることができないんです。なので肌が乾燥してしまって…」

――白塗りのお化粧はどのような流れで行うのでしょうか?

香名恵さん「まずは、お相撲さんが髪をまとめるときにも使われる、びん付け油を手の体温で溶かして、下地代わりとして顔に塗ります。その後に白粉を塗って、眉と眼を書いて赤い口紅を乗せたら完成。お座敷の合間の休憩に食事をすると口紅が取れてしまうので、口紅が落ちないように食事をする方法を鏡の前で練習したこともあります(笑)

――そんな陰ながらの努力も!ちなみに、芸者さんのお化粧道具はどこで購入できるのでしょう?

香名恵さん「浅草の『百助化粧品』で買っている芸者が多いと思いますよ。『百助化粧品店』は舞台用のメイク道具が揃う専門店です。おすすめは化粧水のへちま水ですね」

若い人も芸者遊びを知ってほしいという想い

――芸者さんご用達のお店なのですね。以前ご出演いただいた「COREZO! ASAKUSA」のCMコンセプトは「若い女性が浅草(下町)での新しい体験で新しい発見をする」でした。芸者遊びは20代など若い人も体験して良いものなのでしょうか?

香名恵さん「ぜひ若い方にも来ていただきたいですね。お客さまの中には20代の方もいらっしゃいますよ。20代〜30代の方は10人以上の団体で来られることが多いですね。会社のイベントなどで使われることもあります。以前女性だけのグループに呼んでいただいたこともありましたよ。女子会にも積極的に使っていただきたいですね」

――女性同士になると、どんな会話が繰り広げられるのでしょう?

香名恵さん「着物のことなどを尋ねられることが多いです。例えば浴衣の着方についての相談。『腰紐はウエストの高さで結んでしまいがちですが、腰骨より少し下で結ぶと着崩れしにくいですよ』とアドバイスしたり、『寸胴になるように、帯の下や胸の位置にタオルを巻くと美しく着付けできます』などお答えしていたりします」

――芸者さんたちの活きた知見から知識が得られるのですね。芸者さんを呼ぼうとしたとき、予算はいくらくらいを見ておけば良いでしょう?

香名恵さん「いくらかかるかは芸者を何人呼ぶかによって変わりますね。予算ありきで考えているのなら、あらかじめ料亭の女将さんに希望額を伝えておくと良いかもしれません。ちなみに、芸者を呼べるのは見番と直接契約している料亭だけはありません。遠出先として別のお店に行くこともできるんです。その場合は一律遠出料金をいただきます。今まで、宴会場や結婚式、屋形船などに呼んでいただいたことがありますね」

――初心者は女将さんに事前相談しておくのが良さそうですね。初めて芸者さんを呼んだ際、覚えておくと良いお座敷遊びはありますか?

香名恵さん「やはり『とらとら』と『金比羅船々(こんぴらふねふね)』でしょうか。『とらとら』は、体を使って行うじゃんけんのようなものです。『金比羅船々』は三味線の音楽に合わせて、交互に台の上に置かれた袴(お酒のとっくりを入れる台)に手の甲を乗せていきます。相手が袴を掴んだら、自分は袴のあった場所に手をグーにして乗せます。袴を掴めるのは3回まで。先にお手つきした方が負けです」

――素人が芸者さんに勝つのはかなり難しそうですね…。金比羅船々のコツなどはありますか?

千華さん「袴を3回連続で取ることでしょうか。金比羅船々は駆け引きするゲームです。なかなか3回連続で取る人はいないので、お手つきを誘い出すことができますよ」

――そう言えば、以前ご出演いただいた「COREZO! ASAKUSA」のCMでも金比羅船々をされていますね。このCMを見た方に何か伝えたいことはありますか?

千華さん「芸者遊びは京都しかできないというイメージが強いと思います。CMを見て『浅草でも芸者遊びができるんだ』と気付いてくれるきっかけになれば良いですね。もし敷居が高く感じるなら、まずは街のイベントなどから興味を持ってくれたら嬉しいです

香名恵さん「日本人なら一度は日本独自の文化でもある芸者遊びを体験してほしいと思っています。外国の方に自信を持って花柳界のことを説明できる世界が理想ですね。例えば、雛妓(おしゃくさん)と芸者の違い。雛妓は二十歳前頃の若い芸者を指します。『半玉(はんぎょく)』とも言われますね。それからお稽古を重ねて芸者になるんです」※ちなみに舞妓は京都における雛妓(おしゃくさん)の呼称です。

初心者でも気軽に芸者と触れ合えるイベント

――雛妓さんが段階を経て芸者さんへと成長していくのですね。では最後に、料亭「草津亭」の代表でもあり、東京浅草組合の組合長でもある藤谷政弘さんから、浅草花柳界の今後の活動について教えてください。

藤谷さん「浅草花柳界では、実際に浅草芸者さんと触れ合える体験ツアーなど、リーズナブルなツアーを企画しております。これからのお若い方々にぜひ体験していただきたいと思っています。自国の文化を世界に自慢できるよう、これからの日本を牽引する皆さま方にぜひ体験していただきたいですね。百聞は一見にしかずです」

――この先、浅草で催されるおすすめのイベントは何かありますか?

2019年10月25日(金)・26日(土)浅草公会堂にて、浅草おどりがあります。芸者や幇間(ほうかん)が出演する艶やかなおどりを是非ご覧下さい」

日本に生まれてよかったと思える体験を浅草で

日本に生まれたからには、一度は体験したい芸者遊び。浅草花柳界が企画するイベントは、今まで芸者遊びをしたことがない人でも芸者さんと触れ合えるいい機会となりそうですね。ぜひこの機会に、芸者遊びを堪能し風流を感じてみてください。

この記事を書いた人

いちじく 舞

1990年生まれのフリーライター・編集者。音楽の専門学校を卒業後、地下アイドル→銀座ホステス→広告モデル→OLという散らかった経歴を経て、ライターとして独立。得意分野は、グルメ、恋愛、体験ルポ系の企画。ものづくりが好き。

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COREZO!ASAKUSA

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